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 欄間、給仕口、軸釘、花蛭釘

「マンションの茶席」の造作工事は、年末までに天井が張られるところまでは進めませんでしたが、造作材は組み上げられ、畳屋さんに寸法取りをしてもらいましたので、炉畳、蛭釘の位置がはっきりしました。

畳屋さんには炉畳の位置を荒床の上に墨出ししてもらいました。
床の間の天井板は目透かしに貼ってもらい、こちらは、軸釘、花蛭釘を取付済みです。
軸釘は、1間床ではありますが、三幅掛けることも想定して、中央は固定ですが左右は自在に動く可動の軸釘を、廻り縁を加工して仕組んでもらいました。

大工さんには、給仕口の火灯の型板を取付けてもらい、イメージはだんだんと姿をみせてきました。
8畳の広間ですから、給仕口を火灯とすることもないのかもしれませんが、欄間板に彫った桐菊と源氏香アレンジの図柄と相まって、女性亭主の席らしい柔らかな雰囲気になりそうです。


給仕口の高さが、クライアントの要望で少し高くなったのは、使い勝手のことからですが、プロポーション的には少し心配しています。
席の照明は天井に埋めるLEDですが、障子からの面の明かりとなります。
広間の照明としては、すっきりとしたものになると思いますが、小間であれば、突き上げ窓の体ということになるのでしょうか。
天井が貼られる前には照明ボックスも取付けられます。ちゃんと熱を逃がす換気口もつけてもらっています。

天井内には空調ダクトも配管済みです。

エアコンが席内に見えてしまっては興ざめというものです。空調ダクトからの気流は、天井内のチャンバーボックスで拡散されて、天井板と壁との間の空調スリットから室内へと落とされてくる穏やかな空気の流れとなります。

08
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 茶室計画はじまります。

高層マンションのご自宅に、ご自身で楽しみながら茶事をしたり、お稽古もできるような広間の茶席を造るというリノベーション計画が始まりました。

茶席造りということで、模型というよりは、起こし絵図で確認してもらいました。
僕の大学院の修士論文は「侘び茶における転換期とその茶室_千家をとおして」というもので、とりわけ室町から江戸初期頃までの茶室については、ひととおりの理解があるつもりです。
学生時代には、京都に通い続け、茶道のお稽古もしていましたので、茶室の空間体験や茶会の経験も積んできました。おかげでクライアントとの打合は、とても興味深いものになっています。
クライアントは、茶道を教えていらっしゃるのですから、生半可な僕の茶道稽古の経験では、まだまだ教えていただくことの方が多く、打合は勉強の機会にもなっています。ありがたいことです。
お稽古の場と生活の場、お稽古の動線とお茶事の動線、それぞれの求められる必要空間のボリュームと生活ボリュームのせめぎ合い、何度か打合を重ねるうちに、なんとかプランがまとまってきました。
お茶道具もたくさんお持ちですから、マンション標準の収納スペースだけではとても足りなく、水廻りこそいじる部分は少ないのですが、他はほとんど手を加えることとなり、なかなかの工事となりそうです。
広いリビングや寝室も茶席や収納のため狭くなってしまいます。
造作家具や壁の位置、置き家具の位置などを、現地でテープを貼りながら確認していただきました。