リノベで造る茶室

新築入居前の高層マンションの間取りを変更して、広間の茶室を造ろうという計画です。
クライアントは、ここで生徒さんに茶道を教えるため、茶事がひらけるだけでなく、基本教習が一通りできることを望まれました。
また、手を加えない既存部分との生活動線に配慮した間取りとするため、何度も打ち合わせを重ねています。
比較的広い専有面積の住戸ですが、京間の茶室とするのは難しく、クライアントの台子が田舎間サイズであったこともあり、席は、田舎間8帖となっています。
奇を衒わない落ち着いた席とするため、造作材の吟味、見附、見込み、チリ寸法などに配慮し、職人の技量が必要な品格のある茶席に仕上げています。
空調換気システムや照明なども、茶席の雰囲気を壊さないようにデザイン配慮しています。
所在地 :東京都千代田区
用途地域:
構造規模:
敷地面積:
  m²/  坪
建築面積:
  m²/  坪
延床面積:
  m²/  坪
家族構成:
主な仕様:
床:本畳 田舎間56目
壁:PB+プラスター塗りの上、聚楽上塗り
天井:竿縁天井 中杢杉板練付羽重ね張り
外壁:
屋根:
竣工  :
2015.01
施工  :
木村良三工務店
既存のDENと収納の一部を潰して、リビングに差し込まれるように8畳の茶室を作っています。
炉は電気炉で浅く作れるとはいえ、既存マンションのコンクリート床からでは、茶室の床はFLから少し上げざるを得ませんでした。そのおかげでもありますが、リビングからみると茶室が上座のように見えてきます。
茶道の稽古のためのお席ということをメインに考え、基本的な構成で造作するように心がけました。できればシンメトリーは避けたかったのですが、既存間取りの都合などで、床の間が中心におく構成となりました。
落とし掛けを低く抑えることで、床の間の強さを少し抑えています。
床柱は、北山の自然絞り丸太
お茶室といっても広間です。
お稽古にも使いやすいように、窓のある側は全面明り障子としました。
障子は石垣張り(千鳥張り)。経師屋さんが丁寧な仕事をしてくださいました。
リビングとつながる側は襖で仕切りました。
欄間には、桐板を3/5ほどはめ込み、上を開けることで、少しだけ隣の間へのつながりが感じられるようにしています。
   
桐板には、源氏香紋や家紋などをアレンジして透かし彫りしています。襖の唐紙とともに、少しあそびを入れています。
茶道口と給仕口です。
給仕口の位置、使い方はちょっと変則的かもしれませんが、給仕口は、既存のキッチンから近い位置になっています。
引き違い襖の茶道口は、小さな水屋につながっています。
引き違いの片側は、収納です。
マンションの一部改修では、給排水の設備計画や動線計画に、制限を受けることが多いと思います。
席主のクライアントとは、使い勝手について十分に打合せをしています。
床の間廻りのディテイール
奥行きの浅い床の間は、室床風に入り隅を左官で塗り回すことで、コーナーの線を消して、床の深さがわかりにくくしてあります。
床柱の絞り丸太は、天然の絞りで、絞りの深さなど申し分なく美しいです。
柱は、北山の面皮柱。鴨居、廻縁など造作材は、工務店さんが在庫していた秋田杉を使っています。
鴨居は面中で納めてもらっています。
廻縁と天井板の間にスリットがあります。

天井内部にチャンバーボックスを作ることで、空調の吹き出し口としています。
エアコンの存在を感じさせることなく、室温をコントロールしています。