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 既存擁壁の調査

横浜市は、崖が多いとよく言われます。
東京だって自転車で走っていると、結構アップダウンはあるのですが、横浜で仕事をしてみると、山を削って宅地に広げていった歴史を感じてしまうほど、アップダウンや崖にたくさん出会います。

この崖地の既存住宅を二世帯住宅に増改築する計画の敷地も、数十年前に造られた擁壁の上に建っています。
数十年前となると、時代的な雰囲気もあってのことと思いますが、擁壁の完了検査は受けていないようです。そうなると、擁壁上での増改築ついては、安全性のために、いろいろと検査・調査が必要で、結果によっては、制限もかかってきています。

擁壁上に建てる建築については、基礎の作り方や杭などの地盤対策により、擁壁に負担をかけずに建てることが可能ですが、つい先日も葉山で、崖が崩れて死亡事故となったように、擁壁自体の安全性への検証も必要です。
既存擁壁の高さは5m弱となるのですが、横浜市には、高さ5mまでであれば、擁壁上にある敷地の建築計画に対して、擁壁の安全性を確認するための調査指針がつくられています。
擁壁の内部構造の確認となると、大変な調査となりますが、基本的に外観調査による確認で、一定の結果が出るようにまとめられているので、とても役に立ちます。

その調査票に基づいて、擁壁の外観の異常、擁壁の角度、水抜き穴のサイズや数、裏込め石の状況、擁壁上の排水状況などの調査をおこないました。

水抜き穴のサイズは75Φ程度で、擁壁面積に対してどのくらいの数があるかを確認しています。水抜き穴からは、間知石の裏込めの様子をカメラで確認しています。

この写真は、間知石の角度の確認。間知石積みの擁壁の場合、高さにもよりますが、65度以下であれば、一般的で安定していると考えて良いようです。
この現場の角度は、70〜74度程度の角度で、やや急な角度ではありましたが、問題となる程ではありませんでした。

目視での擁壁状態の調査としては、不同沈下や表面の膨らみ、横割れや縦割れの有無、擁壁上端部分での排水の状況などにいての評点をしています。

いずれも大きなマイナス点にはならず、横浜市の調査指針に基づけば、「外観上の異常等がすくない」という判定となりました。

調査結果は、報告書にまとめ、増改築の確認申請のための添付書類の一つとして、建築指導課へ提出しています。

 

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 土留めブロック

ブロック壁の安全性については、以前から問題にされていたことではありますが、2018年の大阪北部地震の事故以来、既存のブロックについてもきびしく安全性の確認が求められるようになっています。

以前は、2段ほどのブロックによる土留めについては、暗黙的に認められていたものですが、ブロックによる土留めの基準がない以上、1、2段の低いものでも土留めとして使うことは、許されなくなっています。(特定行政庁による違いはあるかもしれません)
この増改築現場には、既存の外構部分に、土留めのブロック積みやフェンスの基礎部部にブロックが使われています。その既存フェンスやブロック積み部分の現状報告が、役所より求められました。

既存竣工時の確認申請図書には、ブロック積みの状況は、何も記されていませんので、ブロックの非破壊調査によって、鉄筋の有無と位置を確認できる範囲で調査し、土を被っていたブロックについては、土地を撤去するなどの対応策を記した報告書を提出しています。

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 崖地に建つ住宅の増改築

崖地に建つ地下駐車場のある既存住宅を、二世帯住宅に増改築する計画が進んでいます。

先日、既存RC地下室部分の現状確認、構造確認の検査を行いました。

 

既存住宅は、崖地の低い部分に地下室として駐車場があり、地上に木造2階の建つ住宅です。
今回の計画は、地下室のRC部分を駐車場としてそのまま使い、地上の木造部分を解体して、2世帯住宅に造り変えるというもので、地上部分は新築となるのですが、既存地階部分はそのまま残すので、建築基準法上では、「増改築」ということになります。

このような地下室を残す増改築で大切なことは、地下のRC造が、増築(新築)される木造住宅をのせても構造的に問題ないことです。
そのために、既存住宅ができたときの確認申請及び完了検査時の構造図面と、構造に違いがないこと、コンクリートや鉄筋に、問題となる劣化がみられないことなどを調査をして、新しい木造住宅をその上にのせても、構造計算上、地下室の構造が問題ないことを示します。
当然、増改築の確認申請でもそれを審査されることとなります。

上の写真はその調査で、既存の地下室のRC造部分の鉄筋の状態を確認しているところです。

コンクリートの中に隠れた鉄筋は、こんなレーザー探査機を使います。
鉄筋の太さまでは正確にわかりませんが、コンクリート内部での位置を知ることができるので、既存竣工時の構造図と照らし合わせることで、現状と竣工時の整合性を確認します。

コンクリートの内部にある、鉄筋の位置やピッチを、こんな具合に書き記して、既存図面と照合します。

既存コンクリートの強度確認は、シュミットハンマーという器具を使うことでの推定値を示すことで、役所からの了解を得ています。
場合によっては、コンクリートを抜き取っての破壊検査が必要とされることもあります。

他には、確認できる範囲で、現状の柱や梁の寸法、スパンなどを実測して、既存図面との照合をし、コンクリートの劣化具合を目視確認しています。

今回の検査では、ほとんど申請時の図面とのズレや劣化もみられなかったので、概ね問題なく既存部分の申請ができそうです。