03
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 JAS材を使うことの勉強会に行ってきました。

建築材料に使われる規格としてのJIS(日本工業規格だと思っていたのですが、昨年から日本産業規格に変わったらしい)は、とても多くの建材の基準になっています。

一般の方々は、あまりご存知ないのではないかと思いますが、木の柱や梁材などの構造材や内装などに使う造作材などの木製品にとっては、JAS(日本農林規格)という規格があります。
最近は、電車内の吊広告だけでなく、テレビCMも流れているので、ご存知の方もいるかもしれません。
柱や梁の強度、含水率などを機械的に測定することで、安定した品質の木材を供給するための規格ですが、日本の林業、製材業、材木業など、旧態依然とした慣習がまだまだ残っていて、なかなかJASという制度が使われていないのが現状のようです。

公共建築では、JAS認定品であることを求めることが多いようですが、民間の木造建築、特に木造住宅における構造材では、一般的な木材強度で、十分に足りることがほとんどです。
構造の詳細設計をするギルドデザインの木造住宅でも、特別な部分の木材を除いて、ほとんど強度指定をしなくても、必要な耐震強度を満たすように設計しています。
一般品の木材の方が、価格は安く、普通の工務店さんでも手に入れやすいからです。

JAS認定製材所となるためには、測定機器の購入や定期的な査察・報告など、製材所にとって、経費が高額となるので、どうしてJAS規格品の価格が高くなってしまいます。

価格だけを考えると安価な輸入木材や未認定材を使いがちで、JAS材を敬遠してしまいますが、JAS材には、もう一つ大きな使命もあるようです。
これからの森林管理、森の資源を永続的に良好な状態で、保全していくためには、JAS規格のことを一度考え直すことが、必要なようなのです。
世界的なFSC(森林会議協議会)や、SGEC(国際森林認証制度)など、循環的な環境保全のためのシステムに対しての日本の取り組みは、かなり遅れています。
JAS材を普及させることが、森林の徹底した管理への期待につながるようです。

世界環境としての森林というと、大きな話になりますが、我々の設計する小さな住宅でも、エネルギー消費を抑え、心地よい室内環境の住まいづくりの考え方は、そことつながっていると思っています。
微力ではありますが、住まいづくりを通しても、次の世代につなげていきたいこの環境を守っていく一助となれば、素晴らしいと思っています。

 

 

03
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 アクアレイヤー見学

建築家31会でも、お世話になっている(株)イゼナの前田さんに、アクアレイヤーの工事の様子を見せていただきに、現場へ伺ってきました。
アクアレイヤーについては、実はずいぶんと前から知っていて、水を蓄えた特殊の袋を床下一面に敷き込み、その水を温めることで暖房する温水タイプの床暖房だと思っていました。
当時は、袋内の水を、熱源で温めるだけでなく、太陽光からの熱を床で受け止め、水の中に蓄熱することで、陽の落ちた後も暖かい床を維持することができる省エネタイプの床暖房との認識でしたが、もう、ずいぶんと進化していて、いろんな可能性が広がってきているようです。

今回見学させていただいた現場は、2階の床下にアクアレイヤーを敷き詰め、下階の天井との隙間に仕込んだエアコンからの熱を、アクアレイヤー内の水に蓄熱させるというもの。
エアコンから送られる暖気は20度から23度程度の低温のもので、これが2階の床にたまり、2階のリビングに送られるなかで、アクアレイヤー内に蓄熱されていきます。
2階では、一般的な床暖房となるのですが、1階も、天井からの輻射暖房として有効なのだという考え方です。
ヒートポンプを備えたエアコンを使うというのは、暖冷房の機器として、最もエネルギー効率の良い機器を使うということで、イニシャルコスト、ランニングコストともに、とても効率的ということですね。
床暖房としては低温ですが、最近の断熱性気密性の高い住宅では、これくらいの温度でも十分快適な室内環境が作れると思います。
すぐに熱くなってほしいという方には、向いてないのかもしれませんが、自然な温もりという快適さは、とても貴重です。
仕込んであるのがエアコンですから、夏には、冷風を循環させることで、アクアレイヤーの水を涼しい温度に保ち、冷輻射の床、天井として使うこともできるようです。
一度体験してみたくなりました。
夏の冷輻射の話など、もう少しお話を聞きたいと思いますが、今度使ってみたくなるシステムでした。
どなたか、やってみたいというクライアントは、いらっしゃいませんか!
 
現場で撮らせてもらった写真です。

蓄熱材に水をつかうというのは、特殊なことで、漏水などの心配がつきまといます。
アクアレイヤーでは、何層にもなる特殊な袋が重ねられている上に、電気的に漏水監理できるようにされていました。

1階から2階の床を見上げたところ。
敷き詰められてアクアレイヤーを受けているのは、ガルバリウム鋼板の折板です。
この鉄板の下をエアコンの空気が流れ、鉄板からアクアレイヤーへと熱を伝えます。
 
 

09
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 蓄熱薪ストーブ勉強会の2

蓄熱ストーブの勉強会で、遠赤外線についても教えてもらいました。
室内温熱環境を考えるにあたって、 最近話題になっている輻射熱の話でもあります。

蓄熱薪ストーブは、内部に蓄熱材を蓄えているのですが、クラッディング(外装材)も蓄熱材で覆われています。
蓄熱材として使われるのは、天然石やセラミックです。
天然石やセラミックには、その構成物に酸化化合物、 酸化鉱物が多く含まれていて、その酸化物の働きにより、天然石やセラミックは、遠赤外線の良い吸収体であるとともに、良い放射体ともなるのだそうです。
蓄熱ストーブも鋳物ストーブもどちらも遠赤外線は出しています。ただ、燃焼時の表面温度が違うために、放射する遠赤外線の波長が違います。
遠赤外線は、3μm〜1000μmの長さの波長を持つ電磁波で、波長には、幅があります。
このうち、人にとって心地よい温度と感ずる波長というのは、8μm〜14μmで、この波長を出す表面温度というのが、90度以下なのだそうです。
蓄熱ストーブというのは、ガラス表面こそ250度くらいにあがるものの、多量の天然石やセラミックを蓄熱体として使うことで、外装部を90度程度の温度となるように、薪の燃焼から発生する熱量を閉じ込め、ゆっくりと放熱するストーブということです。
その熱は、空気を温めるのではなく、直接人に届くような熱エネルギー(遠赤外線)にもなるということです。
表面が高温となるストーブは、遠赤外線を輻射熱として飛ばしつつも、多くの熱エネルギーは、対流熱として空気を温めるのに使われ、薪が燃焼している間は熱いのですが、燃焼が終わると、急激に冷えていくことになります。
どのストーブが良いかということとなると、使う環境、条件によるのですが、すくなくとも、1回の燃焼で、長く適温を保つことができる蓄熱薪ストーブの省エネルギー性は、かなり高いということです。
下の写真は、勉強会で体験させてもらった遠赤外線の実験の様子です。

ガスコンロと、コンロによって熱せられた天然石が置いてあり、その右にファンがあり、横から風邪が送れるようになっています。
火のついてコンロも熱せられた石も、その上に手をかざすと熱く感じます。
どちらも熱が上昇してきているのですが、横から風を送ると、コンロからの熱は、吹き飛ばされて、かざした手に熱気が感じられなくなります。
それに対して、石の上にかざした手には、熱気が感じられます。
コンロの炎からの熱が、空気の対流熱であり空気が飛ばされれば、熱を感じなくなるのに対して、石からの熱は、遠赤外線の輻射熱(電磁波)で、輻射熱が空気を介在しないで熱を伝えているということないなります。
薪エネルギーの多くを蓄熱して、遠赤外線として利用する蓄熱ストーブは、省エネにおいては、とても有効そうです。
しかし、この勉強会では話が出ませんでしたが、少し勉強してみると、輻射熱、遠赤外線というのは、扱いの難しいエネルギーでもあるようです。
まだまだ、勉強することはたくさんありそうです。

08
29
 蓄熱薪ストーブの勉強会の1


ギルドデザインでも薪ストーブや暖炉のある家を何軒が造っていますが、環境先進国であるヨーローッパの国々では、薪ストーブについても新たな基準が作られ、よりエナルギー効率が高く省エネで、安全な製品が普及しようとしています。
先日、「薪ストーブライフ」を出版している沐日社さんで、蓄熱薪ストーブの勉強会があったので、参加してきました。
講師は、スイスの薪ストーブ会社「TONWERK LAUSEN社」の日本代理店である「青い空」の小川さんが、愛知県より来てくださっていました。

日本は、「暖房」という考え方において、かなり後進国のようです。
いまだに室内で暖房機器を燃焼させて、ポイントで温めるような採暖という考え方が、大半です。
室内で燃焼させれば、空気が汚れ、新鮮空気の取り込みが必要になります。それは、外気=冷気を室内に入れなければならないということです。
韓国では、オンドルという床暖房がありますが、これは室外で燃焼させた暖気が床を巡るものです。暖房による室内換気の必要性はないことになります。
薪ストーブ同じようなもので、室内燃焼型で、日本では、鋳物製の薪ストーブが大半です。
鋳物製の薪ストーブといっても、ヨーロッパや北アメリカからの輸入品で、燃焼効率や操作のしやすさなどは、かなり良いものだと思っていました。(確かに、古いものとは比べられないほどの高性能でしたから。)
これからの新しい基準のなかでは、単なる鋳物性は時代遅れになりそうです。
住宅の高気密高断熱化、エネルギー利用効率強化が進むなか、薪ストーブも開放型から気密性を高めて、給気をどれだけコントロールするかへ移り、さらなる省エネ化が求められているようです。
そのなかで注目されているのが、蓄熱薪ストーブということです。

これまでの薪ストーブは、外装の表面温度が上がり、対流熱によって室温を上げるような作りになっていました。
表面温度は、燃えている間、必要以上に熱くなるのですが、消えてしまうと暖かさもなくなっていくので、薪を連続的に焼べる必要がありました。
対して、蓄熱型は燃焼による熱を、ストーブ内部の蓄熱材の蓄え、ゆっくりと放熱する仕組みを持っています。1回の薪の燃焼で、短いもので4時間、長いもので24時間も放熱するのだそうです。
ストーブ表面温度は、燃やしたときには上がるものの、90度前後に抑えることで、人体にとって快適となる遠赤外線を放出するということです。
 

 
蓄熱型と限ったわけではないと思いますが、薪ストーブの扉周りの機密性を高めるためのパッキン部分の詳細です。
専用ダクトから給気をおこない、空気のコントロールをしないと燃焼効率に問題が出てしまいます。
小川さんは10年も使っていても、このパッキンは痛んでいないとのことです。
 
 
 

07
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 YKKap 体感ショールーム見学

YKKapの品川ショールームがリニューアルして、この6月より、建築・設計関係者向けの「体感ショールーム」として生まれ変わりました。
建築家31会の勉強会として、セミナーとともに体感させていただいてきました。
体感ショールームは、YKKapのものづくりの歴史を紹介する「ガイダンスゾーン」、新商品などの展示がある「商品展示ゾーン」、実際の窓の使い勝手や性能を体感できる「窓の性能体感ゾーン」、セミナーなどの開催できる「コミュニケーションゾーン」で構成され、現在から未来の窓までの商品紹介と性能の違いをわかりやすく、体感できるように展示されています。
このショールームのメインは、最も面積の広い「窓の性能体感ゾーン」です。
窓の基本性の一つ一つをサッシやガラスが変わることで、どれだけ違うのかを体感できるようになっています。
窓の遮音性能では、サッシ枠とガラス構成の違いで、外の音がどのくらい聞こえにくくなるのかが、車の音や子供の遊び声などの生活音が、どれだけ聞こえにくくなるかを聞き試すことができます。
庇一つで陽射しの入り方が変わる様子も知ることができます。
特に、断熱効果の体感ROOMは、5つの断熱性能の違う部屋が、気温0度程度の外気となる部屋に面して作られていてます。
昭和55年基準の部屋と平成25年基準の部屋を比べれば、断熱性能の違いがはっきり体感できるのですが、平成25年基準といえど、この程度なのかと実感させられてしまいました。
建築、住宅の素晴らしさは、これだけで決まるものではなく、むしろ建築家が携わることで生まれる多くの数値では語れない豊かな物事が必要なのですが、これからの住宅・建築では、これらのことは基準として考えておかないといけないことのように、改めて思いました。
最近のギルドデザインの設計でも、この断熱性能は基準の一つとして考えていますが、 体感することで新たに感じ入ることがあったということです。
多くの企業の開発努力により、こういう性能の住宅を、手に入れることができる条件が揃ってきたということです。
このショールームはいわゆるプロ向けで、今のところ2ヶ月先まで予約で埋まっているのだそうですが、是非ともクライアントに体感してもらいたいですね。

07
21
 木造耐火

最近は、木造耐火についての関心が高くなっています。
森林資源の有効利用と森林荒廃を防ぐためにも、木材の利用促進が必要です。
公共施設や商業施設への取り組みには、構造的な強度の検討とともに、耐火性能の向上が欠かせません。
木造耐火については、かなり前からツーバイフォー建築協会木造住宅産業協会といった協会からの限定的な認定仕様というものがありましたが、2〜3年前に国交省より告示による耐火性能仕様が公布され、より一般化してきています。
防火地域での住宅の仕事も多いギルドデザインですので、木造の耐火仕様については、大変関心があり、先日、吉野石膏虎ノ門ビルでの勉強会に行ってきました。

基本的には、石膏ボードによって木部を覆っていくことになるのですが、石膏ボードとして吸水性が少ないことで、もしも雨ざらしとなっても、耐久性の高さが保証されるボードを外部側に使っています。
石膏ボードで包まなければならないとはいえ、木造下地で外壁が作れるということで、仕上表現の可能性は広がりそうです。
吉野石膏さんの虎ノ門ビルは、ショールームとしての商品紹介だけでなく、音響体験もできる施設がありました。

実感しなければわからないことですが、体験した遮音性能が作り出せるというのは驚きであり、魅力的です。
体験した遮音壁のさらに上のレベルでは、下図のようにコンクリート壁80センチ厚に相当する遮音性能の壁というのもあり、さらにこの数倍上のレベルの遮音壁もあります。それらが乾式でできているのは、工事費用としても、かなりローコストに貢献します。シナコンなどの音に対して厳しい環境で、利用があるようです。

ショールームには、石膏ボードがどう作られて、製造段階でリサイクルに取り組んでいるか、製品としてこれまで知っていたもの以外の建材を見ることもできました。
コスト的にメリットのある建材も多そうで、見積調整に役立ちそうな勉強ともなりました。