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 茶室リフォーム竣工

「マンションの茶席」の現場が竣工しました。

茶道教授をされているクライアントは、現在お住いのマンションの共用施設としての茶室を利用して、教えてこられたのですが、茶室としての体裁や使い勝手が悪い席だったようです。
昨年、新しく竣工したマンションにお住いを移されるにあたって、ご自身の生活のありようと、お茶を教えるために使い勝手の良い席を、リビングや個室などをいじりながら、入居前にリノベーションしておこうといういうご計画でした。
茶道をご自身が楽しむだけでなく、茶道の基本をお弟子さんに教えるために、「花月」など七事式もできる範囲で教えることのできる8畳広間の茶室を構えることがご希望でした。
できるだけ基本な形を求めたのですが、生活エリアとの兼ね合いから、炉を基本的な位置に切ることがかなわず、下座床の席となっています。

茶道口に加え給仕口も用意していますが、給仕口は、風炉の時に使うものとして用意されていて、炉の時期に使える位置にはありません。
給仕口が火灯になっているのも広間ではあまりないことで、広間の固さを和らげる女性的な景色になっているのだと思っています。
限られたマンション空間のリノベーションですので、京間でつくることは叶いませんでした。小さくなってしまいますが、田舎間の畳割りです。
京間からすれば狭くなってしまいましたが、その分、お道具の収納スペースもたくさん必要なので、裏廻りの納戸を広げています。
 

水屋は半間もとれていません。
完全なスケルトンリフォームではありませんから、給排水管が自由になるわけでもないところで、既存のトイレ側に近づけた位置に用意できたおかげで、なんとか給水排水をとることができました。
工事の完了とともに、空調業者さんに使用説明をしてもらいました。
茶室内の空調の説明の後、既存エアコンのメンテナンスなどについても、ついでに説明してもらいました。
知らなかったことなのですが、最近の天井カセット型のエアコンには、パネルが自動でおりてきて、掃除がとても簡単なものがあるのですね。

 
 

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 左官上塗り

「マンションの茶席」の現場も大詰めです。

左官屋さんが、中塗りを終えて中二日開けたところで、上塗りに入りました。
僕が大学院を卒業後に勤めていた水沢工務店では、中塗りの段階で聚落土入りの材料をつかっていて、中塗り段階では、仕上がっているように見えたものです。
中塗りで1年ねかしておいて、落ち着いた段階で上塗りをするというようなこともしていました。

上塗りは聚落ですが、天然のものではありません。本格的な土壁でもない限り、本来の聚落土で仕上をすることは、まず少ないでしょう。
天然の聚落ではなくとも、風合いもよろしいし、割れの心配もすくない、何より工期が短くてすむのは、現代の住宅の中に造る和室やリフォームには向いた、すぐれた材料です。

火灯口の曲線もきれいに塗り上げられました。
襖はまだですが、障子は納められ、障子紙は、美濃紙を千鳥(レンガ張り)に貼ってもらいました。
今日では、障子紙は機械で漉くことで、大きなサイズが造れますが、かつてはそういうわけにもいかず、1尺程度の巾のものでした。
この茶室でも、そういう障子紙のつなぎを楽しんでもらいたくて、障子の組子の割付を紙の寸法をもとに組んでいます。
障子紙は障子1本で2枚半を貼り並べるともいわれますが、そこまで厳密ではなく、組子と組子の真ん中に、つなぎ(巾1分弱)が出るようにしてもらっています。

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 天井板貼り、炉壇固定

マンションリフォームではたいていの場合、マンション規約などで残業工事ができません。お隣のことを考えれば、とても迷惑です。
「マンションの茶席」の現場も、6時には掃除を終わらせることになっているので、そのちょっと前に現場の確認にいってきました。
さすが高層マンションです。夜は夜で、すばらしい眺めです。

造作工事は、空調のダクト工事が終わったのを受けて、天井板が貼られました。
天井が貼られるとぐっと落ち着いてきます。
今回は、既製品の電気炉用の炉壇の高さや既存床暖房などの対応から、和室床がFLより150mmあがったために、結果的に天井が少し低めに押えられています。
8帖の部屋としたは、気になるだろうかと少し悩ましかったのですが、それほど問題はないようです。


きれいな中杢の羽重ね天井ができ上がりました。右の金物は吊り釜用の蛭釘。
吊り釜は、3月になって、春を感じてもらうようにと、揺らぎを演出するために天井から釜を吊る点前です。 その鎖を吊るために必要なのが蛭釘です。

これは水屋の天井写真ですが、網代としました。
マンションリビングや書斎の一部をリフォームして造る茶室なので、火の使用が制限されてしまいます。今回の炉には、電気炉を用意してもらいました。
既製品の電気炉に炉壇と炉壇を受ける金物がセットになったものです。
前述した通り、和室の荒床は既存レベルから少し上げられて、炉壇受けを固定するための下地が組まれました。

炉壇受けを取付けた後、炉壇がはめ込まれます。
写真は不燃板が貼られた炉壇受けの外側の様子です。

 

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 大工さんの仕事を見学

新築マンションの入居前に8畳広間の茶室を造るという「マンション茶席」の現場は、正月早々2日から大工さんががんばってくれました。
良い大工さんは引っ張りだこで、次の仕事の予定が詰まっているのだそうです。
先週のこととなりますが、事務所のスタッフさんにも大工さんの仕事の様子がわかる段階でみてもらおうと、現場に行ってきました。

丁寧な仕口の加工が求められるこのような茶室造作では、一気に仕事が進んでいくというようには見えないかもしれませんが、工事は順調です。
手間をかけて造っていただいています。

年末にはまだついていなかった欄間も組まれていました。リビングとつながる茶室です。リビングからの見え方も気になっていましたが、桐菊に源氏香崩しの透かしもきれいに見えています。

天井板も貼り始められているところで、空調屋さんが入って、空調の吹き出し、リターンのチャンバーボックスが取付けられたら一気に貼り納められる予定です。
天井板は、杉中杢の板を羽重ねで貼ってもらいます。
羽重ねによるリズムが、モダン一辺倒でない落ち着いた席を造ってくれることと思っています。

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 造作工事始まりました

現場では、大工さんによる造作工事がはじまっています。

現場乗込み前に工務店さんの加工場で、仕口加工などを済ませてきていますので、現場では最終的な調整と組立てです。
エレベーターや階段の寸法の関係で、2間(3.64m)長さの物が運べなかった問題も、大工さんの丁寧な仕事と材の質の良さから、繋ぎ部分にいやな感じは残りませんでした。

8帖の茶室ですから、どうしても2間ものの材が必要です。残念ながら切断して搬入し、現場でのジョイントとなります。鴨居の赤杉は目の通った良い材です。裏側からこのようにボルトで締め込んでいます。

敷居も裏からボルトで締め込み、見えない木口には込栓で狂いを押えるように細工されています。


鴨居と柱の仕口です。木がやせても隙が出るようなことがないよう、柱に差すように彫り込んだ上に、見えない裏側では内法ボルトを使って締め込みます。
柱は天然の面皮です。天然物ですから、一本一本の癖がある面にぴたりと擦り着くように納めるのは、丁寧な技術が必要です。大工さんに感謝です。
 
 
 

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 茶席の金物

「マンションの茶席」の現場が、ようやく動き始めました。
新築の高層マンションにお住まいになる前からのリノベーションで、奥様のための8帖の茶席をつくる計画です。
工務店さんを指名でお願いしたこともあって、大工さんたちの空きを待ってのスタートです。
茶席は、奥様のお茶事だけでなく、お弟子さんたちのお稽古の場所にもなるので、 限られたマンションのスペースを、茶事、お稽古の動線に無理なくどちらにも使い勝手がよいように打合を重ねてきました。
この日は、大工さんたちによる現場の詳細な実測と、クライアントと工務店さんを交えての工事見積の最終的な詰めの打合でした。
良い材料と良い仕上を求めるとついつい工事金額があがるものです。取り分け大切な茶席の仕上を守りながらの予算調整ですから、こちらからの仕様変更等も含めてのクライアントからのご返事待ちとなりました。
工務店さんに、茶席で使う金物類をご用意いただきました。
一般住宅ではなかなか使わない金物です。京都の室金物さんから手配していただいただけあって、良い金物がそろいました。

床の間の軸掛けに使う軸釘(二重折)、床の間天井に打つ花蛭釘、床の間壁に埋め込む無双釘、床柱の花釘、床の間入り隅に打つお正月飾り用の柳釘、それにお釜を吊るための釜蛭釘などです。
どれも手造りで、とても良い肌の仕上がりです。
特に床の間軸釘は、三幅対で使えるように、廻り縁を細工して自在に釘が動くものをお願いしました。

それにしても最近の高層マンションでは、エントランスや共用スペースはお金をかけています。広々と、そしてゆったりと来客や住人を迎えるようにつくられています。


お打合の後、「熊魚菴たん熊北店」で、お昼をごちそうになりました。
久々の京料理を堪能させていただきました。